食肉の扱い方および保存方法

食肉の中でも牛肉は保有水分が一番少ないため、食肉として保存できる期間が最も長く、
特にブロック状態のものは非常に日持ちがよいとされています。つまり、日持ちがよいか
悪いかは、ある意味で水分の含有量に左右されるわけです。豚肉、鶏肉の順で保有する水
分の量が多くなり、鶏肉などは鮮魚と同じ保存条件と考えてよく、買った当日、または翌
日くらいには調理したほうがよいでしょう。なお、ここで言う保存期間とは「食肉の風味
を損なわない期間」という意味です。
 多少の変色をしている程度なら、肉が腐敗していると考えるのは早計です。しかし、こ
のような状態になるまで放置せず、早めに調理することが大切です。食肉は精肉処理の
段階でで空気中のの雑菌やカビ類が肉に付着し、これが繁殖することによって変質が始まる
わけです。このほか空気中の酸素が肉に含まれているたんばく質や脂肪を酸化させるのも、
本来の風味を損なわせる条件の一つになっています。また、熟成の進んでいる肉の肉汁は、
細菌の絶好の培養素地になりますから、熱成された肉は味がよいと同時に変質するのも早
いようです。
 食肉は枝肉→部分肉→精肉というように、その処理過程を経ますが、厳重な衛生検査を
受けた食肉は無菌状態です。しかし、その処理過程で空気中の雑菌やカビ類が付着するわ
けですから、特に最終商品となる精肉の段階で、細かい形態の商品に分けられるにしたが
い、次第にその付着が多くなってきます。要するに、空気に触れる面積が多い形態のもの
ほど、その保存性に差が出てきます。すなわち、ブロック肉(かたまり肉)、厚切り肉、
角切り肉、スライス肉、ひき肉の順に保存件が悪くなります。保存性のいちばん悪いひき肉
は、よく悪い肉を使うからすぐに変質してしまうと言われますが、これは誤りです。先に
説明したように、ひき肉がいちばん空気に触れる面積が大きいため、より雑菌やカビ類に
触れやすいためです。このように鮮度の維持が困難なものは、なるべく早く調理するか、
あるいは一度加熱調理した上で冷凍庫などに保存するとよいでしょう。


冷蔵(チルド)肉の保存方法

食肉の変質を防ぐために、低温で保存しなければならないことはよく知られています。
しかし、家庭用の冷蔵庫は開閉が頻繁なため、庫内の温度が一定しません。特に夏場では、
開閉するたぴに庫内の温度は10℃近くに上がっていることがあります。頻繁に開けない
ように努め、開けたらすぐに閉めるということを心がけましょう。また、冷蔵庫の能力を
最大限に発揮させるためには、なるべく庫内を整理し、食品を詰め込みすぎないことです。
 食肉保存の理想的な保存温度は0℃から2℃です。最近、庫内の一部が0℃からマイナス2℃
に保たれる「水温室」なる設備を持った冷蔵犀が登場してきましたが、実際にこの能力を
完全に備えていれば、食肉を素晴らしい状態で保存できるでしょう。
 家事の都合上のまとめ買いや特売日にめぐりあった時などに、適切な保存方法を習得し
ていれば実利を得ることができます。冷蔵庫で保存する場合は、食肉が空気に触れないよ
うにラップ材できちんと包んで空気を遮断し、さらに密閉容器に入れます。こうしておけば、
食肉中の水分の蒸発を防ぐこともできるし、食肉に含まれる芳香の揮発も防止できます。
しかし、こうして厳重に保存しても家庭用冷
蔵庫内では、牛肉で3日〜7日くらい、豚肉では2日〜4日くらいが保存期間の限度と
思ってください。

冷凍(フローズン)肉の保存

食肉を生のまま長く保存する場合は、冷凍保存しかありません。食肉を本格的に冷凍す
るには、20〜30kgの段ポール詰めの肉魂をマイナス35℃以下で急速冷凍します。そして、
その後マイナス20℃くらいで保管すると1年くらいは充分その鮮度を維持できます。
 牛肉を冷凍保存する際、水分の蒸発と空気中の酸素に触れることによって起こる変質を
防ぐため、冷蔵状態での保存より厳重な包装状態に留意する必要があり、丈夫なラップ材
で二重に包装するくらいの処理が必要です。冷凍状態になると、破損し易くなります。破
損すると、その箇所から冷凍状態でも水分の蒸発や酸化が進みます。
 家庭用の冷蔵庫(フリーザー)では、せいぜいマイナス10℃くらいにしか冷えませんか
ら、肉の深部まで冷凍するには時間がかかります。その間に変質が進んでしまいます。
したがって、ブロック肉の大きなかたまりの家庭での冷凍は避けて、うす切り肉を小分けして
冷凍した方が無難です。それでもブロック肉を冷凍したいのであれば、1つのかたまりが1kg
くらいが適当です。人数・料理用途に応じた量に切り分け、使いきれる量のかたまりごとに
冷凍するのが良いと思います。なぜなら、解凍した肉を再凍結すると、肉のうま味である
ドリップが2度も失われるなど、著しく品傷みするからです。
 ひき肉を冷凍する場合は、ラップ材に包んで空気を抜き、板状にして冷凍します。板状
にすると早く冷凍ができ、使用する際は手早く解凍できるという利点があります。ひき肉
を団子状にすると、冷凍に時間がかかり、解凍時間も長くかかるので、決して団子状で冷
凍しないでください。
 薄切り肉の場合は、面倒でも1枚1枚ラップ材で仕切るようにして包んで冷凍します。
冷凍する際は、あまり厚みのある積み重ね方をしないでください。厚く積み重ねてしまう
と、深部がなかなか冷凍できません。
 冷凍にしたブロック肉、ひき肉、薄切り肉は、解凍する際にドリップ(肉汁)が出ます。
この肉汁は肉のうま味の決め手になるものですから、決して捨てないでください。
 最近、真空包装のものをさらに冷凍して販売しているものがあります。これは空気を完
全に遮断しているので、かなり信頼のおける保存状態になっています。したがって、
家庭での生肉冷凍よりさらに日もちがよいものとなっています。
 冷凍肉を解凍するには、低温で緩慢に解凍するのが原則です。これは、肉のうま味となっ
ている肉汁が急に流れ出さないようにするためです。かりに、冷凍肉を夕食の材料として
使うのであれば、肉の大きさ、季節によって、前日の夜か当日の朝のうちに冷蔵庫に移し
ある程度時間をかけて解凍します。水やお湯につけて急速に解凍するのは避けてください。
 料理目的にもよりますが、ローストビーフやステーキなどにする場合は、調理する直前で
室温くらいまで肉の温度を上げたものが、堅くならずによいとされています。
 肉は魚と同じで生鮮食品ですから、できることなら買い物のいちばん最後に買うことを
勧めます。すぐに家に帰って冷蔵庫やフリーザーに入れるか、手早く調理にかかることです。
これがより美味しく肉を食べる最大のポイントです。



その他の保存方法

肉の保存方法は、生肉の冷蔵や冷凍だけではありません。調理してから保存するという
方法もあります。たとえばつくだ煮やボイルして保存する方法があります。
肉は加熱することによって、付着している雑菌やカビがほとんど死滅するので、変質の進行が
停止します。つくだ煮のように、調味料や香辛料を使うと、塩分や糖分が調理後の雑菌や
カビ類の増殖をかなり抑えるのできわめて有効な保存方法ということになります。
 特に、傷みの早いひき肉は、ミートポールやハンバーグなどにまとめて作り、焼いたり揚げたり
スープ煮などにして保存します。スープ煮にしたものはスープと一緒に冷凍して、使用するときは
凍ったままで同時に解凍すればよけというわけです。

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